#15 国家と大企業と学者、大きな力に挑む

平成16年7月23日、「空気環境における20条7の性能評価機関」が大臣より認定され、いよいよ申請の運びまでこぎ着けた。

しかし、申請書式もなければ前例もないので、書式から自分で作成しなければならない。

何度も何度も作り直し、ようやく提出できたのは暮れも押し迫った平成16年12月のことだった。

「大丈夫だろうか。無事に法律の壁をクリアできるだろうか」

寺島は、不安な気持ちのまま正月を迎えた。

でも、後ろには5万4千人の署名を寄せてくれた仲間がついている。

かれらのためにも、がんばりたい、という気持ちが寺島を支えていた。

平成17年1月7日、評価委員による第1回目の面談による正式評価が行われた。

国から任命された学識者6名による評価である。

「国を代表する学者たちなのだから、理解は早いにちがいない」

かすかな期待は、まんまと裏切られるかたちになった。

第1回目の内容は資料説明のみで、次回の審査が行われるのは3月というのだ。

「これが役所の仕事なんだな」半分は諦めながらも、やはりいらだつ役所の対応。

こうしている間にも、自分たち民間の建設会社は仕事をして生きていかねばならない。

その厳しさを役所は何もわかっていない気がした。

それでも寺島は辛抱強く、審査会を繰り返しながら、なんとか次のステップまでこぎつけることができた。

「性能評価書」の交付までかかった時間は、第1回目の審査から17ヶ月。

民間人が、国や法律という見えない敵と戦っていくには、なによりもくじけない精神力が必要だ。

この運動を通して、寺島が学んだことは、国家と大企業、学者による大きな力が法律を作り、自らを守っているということだった。

国民の健康や利益は二の次にされている。やり場のない怒りが寺島をより強くしていた。

引用:https://www.wb-house.jp/wb/story