#12 見えてきた住宅業界と国の甘い視点
全国展開するときWB工法の性能を伝える裏付けになれば、と思って始めた新築住宅の実測調査。
それが思わぬ形で、施策の盲点をあばくことにつながっていった。
WB工法で建てた家は、温熱環境でも空気環境でも驚くべき数値を出していた。
温熱環境としては国が推奨する高気密住宅をはるかに上回る温かさで、カナダ・北米の寒冷地と同じかそれ以上の温かさを証明。
夏は東京での室内体感温度を1.4度も下回った。空気環境では、ホルムアルデヒドの量が高気密住宅とは比べものにならないほど低かった。
また湿度は、カップに水を入れて室内においておくと、高気密住宅では湿度95%にもなるのに対して、WB工法では半分以下の42%、結露実験でもWB工法では結露が現れないという結果になった。
この結果をNHKの「おはよう日本」という番組で「化学物質がこもらない家づくりに挑戦している大工棟梁たち」という特集で放映してもらう準備がすすめられていたとき、大学の研究室からストップがかかったのだ。
「高気密住宅は換気を基本としているから比較はできない」というのがその理由だった。
しかし、高気密高断熱の家の普及に伴って「シックハウス症候群」は深刻さを増していった。
化学物質が家に高濃度でこもるための健康被害だ。
寺島は怒りに震えた。
「なぜ国は根本原因をつきとめて、このような健康被害が二度と起こらないような対策を講じないんだ。高気密高断熱住宅を推奨している国の責任だ!」
平成13年、国土交通省と厚生労働省はシックハウス症候群対策について、国民からの意見を募っていた。
そこで、寺島は、それまでの実験結果をまとめたデータを送り、高気密住宅の危険性を訴えたのだ。
寺島には確信があった。
しかし、国からは何の反応もないまま、「換気システムを取り付ければよい」というだけの解決策が発表された。
平成15年7月、国は24時間換気システムの義務化を決定した。
引用:https://www.wb-house.jp/wb/story