#9 公的融資を最大限に活用し、製品開発へ

新しく来た銀行支店長の励ましで、寺島は自分の会社で開発することを決意し、まずは資金の手当てから着手することにした。

「創造活動促進法」を利用すると、最高2000万円までの助成が可能なこと、「経営革新法」では担保の2倍までの融資が受けられることなどを教えてもらい、最大限の公的融資を申請した。

どれもすぐれた技術が条件だ。

「ここまでの融資は前例がありませんね」と担当者からは冷ややかな対応をされたものの、なんとか資金調達の目処がたった。

「よし、あとは製品開発。前進あるのみだ!」

まず、百枚を超える図面を基に、中小企業支援センターの協力を得ながら加工工場に金型製作と加工を依頼した。

「どんな試作品ができてくるだろう」と楽しみに待っていたが、いくら待っても形にはなってこない。

「いったいどうなっているんですか。いつになったらやってもらえるんですか」


問い合わせにも焦りが入る。

ベンチャー企業の製品開発は、先の見通しがつかないため、なかなか動いてはもらえない。

せっかく資金の目処がたったのに、なんの成果もあげられないまま過ぎていく時間が歯がゆかった。

「人が動かないなら自分が動くしかない!」

思いあまった寺島は、30年前の同僚を頼って愛知県に飛んだ。そこでプレス加工金型の26種類を依頼することにした。

プラスチックの成型17種は、地元で金型を造ってもらうことにした。

ようやく製品づくりに向かって具体的な動きが始まった。平成10年5月のことだった。

引用:https://www.wb-house.jp/wb/story